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日本人にとって身近なロゴマーク「家紋」について学んでみよう!〜デザイン編〜

コラム
2021.11.02
前回の記事では、身近なロゴマークである「家紋」の由来や、人々に広まっていった背景など、「家紋」の歴史について詳しく解説しました。

 

さて、長い歴史を持つ「家紋」の図案には、ロゴデザインの参考となる要素が色々と含まれている事はご存知でしょうか?

 

「家紋」のどのような点がロゴデザインの参考となるのか、今回は「家紋」をデザインの観点から詳しく解説いたします。

 

 

 

 

 

デザインを見ているのは「脳」!?

脳が情報処理しているイメージ

 

「家紋」について解説する前に、デザインを見た時の“脳の働き”について、少し解説しておきましょう。

脳がデザインをどのように捉えるのかを知っておくと、ロゴデザインする上で“どのようにデザインすれば良いか”の基準となります。

 

 

ゲシュタルトの法則

デザインを見る時は「目」から情報を受け取りますが、情報を処理しているのは「脳」です。

ロゴデザインを見て『かっこいい』や『おしゃれ』と感じるのは、「目」がそのように判断しているのではなく、これまで蓄積された情報などから「脳」が判断しています。

つまり、「脳」がデザインを“見ている”のです。

 

そして、「脳」がデザインを“見る”際に、ある法則がある事が分かっています。

それが「ゲシュタルトの法則」です。

 

“ゲシュタルト”とはドイツ語の「Gestalt」で「形態」という意味の言葉です。

「ゲシュタルトの法則」とは、「接近したもの同士」や「形が同じ(似てい)もの同士」などを“一つのグループ”としてとらえようとする脳の性質の事です。

 

“ゲシュタルト”と言うと「ゲシュタルト崩壊」という言葉の方が、聞いた事がある人が多いかもしれませんね。

「ゲシュタルト崩壊」は「ゲシュタルトの法則」の反対で、“一つのグループ”として認知していたもの…例えば「文字」や「漢字」などがバラバラに見えてしまって、「文字」や「漢字」として認知できなくなる現象の事です。

 

 

 

見たものを“グループ”で認知しようとする理由

グループに分けられているイメージ

 

それではなぜ、「脳」が“一つのグループ”として認知しようとするのかと言うと、情報処理の負担を減らす為です。

 

「脳」は、「目」から入ってきた情報を常に処理しなければいけないので、全ての情報を事細かに処理していては、負荷がかかり過ぎてしまいます。

そこで「脳」は情報処理の負担を減らす為に、ものを見る際には“詳細を見る”のではなく、まずは“大きなまとまりとして見る”ようになっているのです。

 

記事【デザインをより良く作る為に必要な事〜その1〜】の中でご紹介した「デザインの4原則」は、「ゲシュタルトの法則」による「脳」の認知をデザインに活用したものです。

 

デザイン4原則

 

「デザインの4原則」を元に作られたデザインは、「脳」が情報処理を行いやすくなっている為、“見やすい=良いデザイン”という事になるのです。

 

 

 

「脳」が好むデザイン

ハートポーズの女性

 

「脳」は、「ゲシュタルトの法則」だけでデザインを見ている訳ではありません。情報処理の負担が少ないデザインであれば、「脳」は認知しやすい傾向にあります。

 

例えば、「大きさが揃っている」・「位置が揃っている」・「等間隔に並んでいる」・「形がシンプル」など。

 

先述したように、「脳」はまず“大きなまとまり”として捉えようとする性質があるので、“不揃いのもの”を認知しようとすると、情報処理の負担がかかってしまい、認知しにくくなってしまうのです。

 

 

 

ロゴには「脳」が認知しやすい要素がいっぱい!

さて、ここまでの解説で、『ロゴは脳が認知しやすい要素を含んでいる』と感じた方は多いのではないでしょうか?

 

ロゴは“一つのグループ”としてデザインされている為、「脳」が認知しやすく、目に留まりやすくなっています。

また、視認性を高くする為にある程度シンプル(簡略化)にデザインされる事が多く、「脳」が情報処理をしやすくなっている点も認知のしやすさに繋がっています。

 

そして「家紋」にも「脳」が認知しやすい要素が含まれている為、ロゴデザインの参考にする事ができるのです。

 

 

 

「家紋」がロゴの参考になる理由

家紋指差す女性

 

ロゴは「シンボルマーク(図形)」「ロゴタイプ(文字)」の2つの要素(またはいずれか片方のみ)で構成されています。

ロゴの定義

「家紋」は(文字が使われている場合もありますが)図形がデザインされているので、ロゴの「シンボルマーク」の要素に相当します。

 

それでは、「家紋」のどのような点がロゴ(シンボルマーク)の参考になるのか、細かく見て行きましょう。

 

 

正確に分割されたデザイン

「家紋」は、直線や円を使って「家紋のベースの形(正円や楕円)」を正確に分割したガイド(補助線)を引いて、その上に図案を描いています。

この作図方法は「割り出し法」と言って、前回の記事でご紹介した「紋上絵師(もんうわえし)」によって現代にも受け継がれている伝統技術です。

 

「家紋のベースの形」を分割する方法には「三つ割り」「五つ割り」「八つ割り」「十割り」があり、「定規」と「分廻し(ぶんまわし:竹と筆で作られたコンパス)」の2つの道具を使って、「家紋のベースの形」が均等に分割されるガイドを引きます。

 

正確に分割されたガイドの上に図案が描かれているという事は、バランスのとれたデザインになっているという事でもあります。

 

コンパスのイメージ

 

 

 

「コンストラクション・グリッド」が使われている

「家紋」の作図で使われているのは、「割り出し法」だけではありません。「定規」と「分廻し」を使って様々なガイドを引く事で、“整った図案”を描いています。

家紋のガイド線のイメージ

 

実はこの“様々なガイドを使って図案を描く”という方法はロゴをデザインする上でも一般的に使われていて、「コントラクション・グリッド」と言います。

「コントラクション・グリッド」を使うと、パーツの大きさや位置(高さや並び)を揃えられたり、等間隔の余白を作ったりできるので、“整ったデザイン”に仕上がります。

 

コンストラクション・グリッドのイメージ

Twitterロゴ引用元:About Twitter

 

例えば、曲線だけで描かれている「Twitter」のシンボルマークは、何と無く引いた曲線ではなく、正円の曲線を使って描かれています。正円のガイドがある為、どの曲線も歪みがなく、すっきりと整った印象のシルエットに仕上がっていますね。

 

現在ロゴデザインで使われている作図方法が、「家紋」の作図で既に使われていたのです。

 

 

 

単色でデザインされている

「家紋」と言えば白と黒だけでデザインされていますが、特に色が付いていなくても印象に残りますよね。

つまり「家紋」は、“シルエット(形)だけで十分印象に残るデザイン”とも言えます。

 

ロゴをデザインする際、『どのような色を使ってデザインするか』というのも重要なのですが、色だけで印象的なデザインを作る訳ではありません。

『どのようなシルエットのデザインするか』も、色と同じくらい重要なポイントとなります。

 

例えば「モノクロ印刷のチラシ」や「スタンプ(はんこ)」、「彫刻」「焼印」など、使用用途によっては“単色でしかロゴを入れられない”場合があります。

そのような場合に、『単色になったら印象に残らないロゴ』ではブランディングツールとしての役割が弱くなってしまいます。ロゴをデザインする際は、単色で見ても印象に残るデザインにする必要があり、その為にはシルエットにこだわる事も欠かせないのです。

 

 

 

視認性と装飾性が高いデザイン

ロゴデザインは、決して『描き込まれたデザインを使ってはいけない』という訳ではありませんが、視認性の高さも考えてデザインしなければいけません。

先述したように、形が複雑なものは「脳」に負荷がかかって認知しにくくなるので、複雑すぎるロゴデザインは避けた方が望ましいです。

 

さて、「家紋」は前回の記事でもご紹介しましたが、戦場で敵味方の区別をつける為に使われていた歴史があり、視認性の高いシンプルな図案が数多く存在します。

 

また、戦国時代以降は装飾性の高い図案が多数作られましたが、写実的ではなく、ある程度デフォルメされた図案なので、“デザインの省略の仕方”を参考にする事ができます。

 

「家紋」は、視認性の高さと装飾性の高さの両方を兼ね備えた図案が多数あるので、ロゴデザインの参考とするには最適なのです。

 

家紋と和柄のイメージ

 

「家紋」と言えば“和風ロゴの参考”というイメージが強いかと思いますが、和風ロゴに限らず、ロゴデザイン全般の参考になる要素を持っていたのですね。

 

 

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