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大阪・関西万博のロゴが決定!賛否両論となった理由とは?

コラム
2020.09.01
2025年、大阪の夢洲(ゆめしま)で開催される「2025年日本国際博覧会(2025年大阪・関西万博)」(以下、「大阪万博」と記述します)。8月25日にロゴが発表されると、そのデザインに対し、瞬く間に賛否両論が巻き起こりました。

一体、「大阪万博ロゴ」のどういった点で賛否が起こる事になったのでしょうか?

 

今回は、今何かと話題になっている「大阪万博ロゴ」のデザインについて、解説いたします。

 

 

 

 

「大阪万博ロゴ」について

大阪万博ロゴ

画像引用元:2025年日本国際博覧会協会公式ホームページ | 2025年日本国際博覧会 ロゴマーク最優秀作品 決定

 

「大阪万博」のテーマは、“いのち輝く未来社会のデザイン”です。

それではまず、「大阪万博ロゴ」について簡単にご紹介しておきましょう。

 

ロゴデザインのコンセプトについて、「2025年日本国際博覧会協会公式ホームページ」では下記のとおり記載されています。

 

踊っている。跳ねている。弾んでいる。だから生きている。大阪・関西万博。1970年のデザインエレメントをDNAとして宿したCELLたちが、2025年の夢洲でこれからの未来を共創する。関西とも、大阪府ともとれるフォルムを囲んだメインシンボルだけでなく、CELLたちは、文字や数字を描きだし、キャラクターとしてコミュニケーションする。自由に。有機的に。発展的に。いのちの輝きを表現していく。

 

一度見たら忘れられない“クセ”のあるロゴですが、万博のテーマである“いのち輝く”の部分を強く打ち出したデザインである事がうかがえますね。

 

ロゴをデザインした方々は、下記のとおりです。

 

グループ名:TEAM INARI(チーム イナリ) 作者(代表者):シマダ タモツ 生年:1965年 職業:アートディレクター/グラフィックデザイナー グループメンバー: 雨宮 深雪(あめみや みゆき)、大亦 伸彦(おおまた のぶひこ) 上村 慎也(かみむら しんや)、布川 侑己(ぬのかわ ゆうこ) 藤澤 勇佑(ふじさわ ゆうすけ)

 

 

 

「大阪万博ロゴ」が非難されるワケ

NGのイメージ

 

新しく、またはリニューアルのロゴが発表される時、人々の反応として多いのは「カッコいい/カッコ悪い」「おしゃれ/ダサい」といったものでしが、「大阪万博」では「気持ち悪い」といった感想が見られました。

「ダサい」ならまだしも、多くの人々が「気持ち悪い」という強い負の感情を抱いてしまった為、非難を浴びてしまったのです。

 

 

なぜ「気持ち悪い」と感じるのか?

「大阪万博ロゴ」が「気落ち悪い」と言われているのは、「シンボルマーク(図形)」の部分です。

ロゴの定義

シンボルマークを「気持ち悪い」と感じる理由は2つあります。

 

【得体の知れなさを感じる“目”のデザイン】

「大阪万博ロゴ」のデザインの中で一番目を引くのは、やはり“目”の部分ではないでしょうか。

先ほどご紹介した「コンセプト」に、“1970年のデザインエレメントをDNAとして宿したCELLたちが…”と記述があるので、CELL=いのち(生き物)として表現する為に、“目”をデザインしたのだと思われます。

しかしその“目”はCELLに1つしか無いので、“普通の生き物では無い感じ”がします。視線もあちこち向いている(目線が合わない)ので、“何を考えているのか分からない”といった雰囲気です。

 

つまり、“目”と認識できるデザインが含まれているのに、その数や目の向きから「得体が知れない生き物」というイメージを受け、「気持ち悪い」と感じるのです。

 

 

【「クリーチャー」を感じさせるデザイン】

「大阪万博ロゴ」を「気持ち悪い」と感じなくても、おそらく多くの人が感じたであろう事…それはシンボルマークが「クリーチャーに見える」事です。

 

「クリーチャー(英:creature)」は「創造物・生き物」などが本来の意味ですが、海外のSF映画に登場する「クリーチャー」に怪物などが多い為、日本では怪物・化物など“得体の知れないもの”という意味で使われる事が多い単語です。

「クリーチャー」は映画をはじめアニメや漫画など様々な作品に登場しますが、大概はグロテスクなビジュアルなので、トラウマになってしまう人もいます。

“元は普通の人間だったが、何らかの理由でクリーチャーになった(されてしまった)”という設定の「元人間クリーチャー」が様々な作品で登場するのですが、その多くは筋肉をイメージした“赤い肉の塊”で表現されています。

ショッキングな設定とグロテスクなビジュアル(人間であった時とのギャップ)によって、「元人間クリーチャー」に対しては、とりわけトラウマを持ってしまう人が多いように感じます。

 

実は「大阪万博ロゴ」のシンボルマーク、「元人間クリーチャー」を感じさせるデザイン要素を持っているのです。

 

・赤い色=筋肉の色 ・不揃いにつながった丸=肉の塊 ・視線があちこち向いた複数の目=元人間の目

 

トラウマの無い人にとっては「クリーチャー に似てるな」程度の印象だったかもしれませんが、トラウマのある人にとっては強く「気持ち悪い」と感じてしまったと思われます。

 

気持ち悪いと感じるイメージ

 

 

「大阪万博ロゴ」に好意的なワケ

「大阪万博ロゴ」に対して、好意的に感じている人ももちろん多く居ます。

では次に、どんな点が良いと感じられたのかを見ていきましょう。

 

 

デザインの観点で見た「大阪万博ロゴ」

デザインに関わる人からは、概ね好意的な意見が述べられています。デザインの観点で見た場合、どのような点が良かったのでしょうか。

 

好意的なイメージ

 

【インパクト大のデザイン】

デザイン自体に賛否はありますが、いずれの人にも強烈なインパクトを与えた事は間違いありません。ロゴの役割として、人々の印象に残る事はとても重要です。

 

最終選考に残った他の4案のデザインは、決して悪いものではありませんでした。ですが、インパクトの強さは決定ロゴが群を抜いていました。

これはつまり、他のロゴと並んだ時でも十分に“大阪万博のロゴです!”と主張できる強さを持っていると言えます。

 

「東京2020エンブレム」の時もそうでしたが、やはり最終的に決定したロゴは、選考に残った他のロゴには無いインパクトを持っていますね。

※「東京2020エンブレム」については、記事【「東京2020エンブレム」に学ぶロゴデザインのポイント】でもご紹介しています。ぜひ併せてご覧ください。

 

 

【シンプルなシルエットとカラー】

デザイナーがロゴをデザインする際に考えなくてはいけない事の中に、下記のような事があります。

 

・縮小しても認識できるデザインか ・モノクロでも使えるデザインか

 

ロゴを大きく使う分には問題ありませんが、名刺やピンバッヂのような小さなものに使用する場合でも認識できるデザインである必要があります。

どんなに複雑な手の込んだデザインにしても、縮小して潰れるようなデザインは、ロゴとして使えません。

また、ロゴを使うのは必ずしもフルカラーの場合だけとは限らないので、モノクロにした場合でも使えるデザインでなくてはいけません。

モノクロにした場合のロゴは、まさに“シルエット勝負”です。色に頼ったデザインにしてしまうと、モノクロにした際にパッとしないロゴ(他のロゴに埋もれてしまう)になってしまいます。

 

「大阪万博ロゴ」は縮小しても十分認識できるデザインで、使用しているカラーの数は少なく(色に頼りすぎていない)、何と言っても特徴的なシルエットの為、モノクロにした場合でも「大阪万博のロゴだ」というのがはっきりと分かります。

 

 

【キャラクター性を感じるデザイン】

「気持ち悪い」ように見える“目”ですが、見方を変えてみると、それぞれ別の方向に目を向けている事で、ひとつずつのCELLに“個性”を感じます。

また、CELLを大小様々な大きさにする事で、「大きい=大人、父親、強い」「小さい=子供、弱い、可愛い」といった、キャラクター性を感じるデザインとなっています。

キャラクター性を感じると、“得体が知れない生き物”ではなく、“親しみのある生き物”として見えてきます。

 

ロゴの役割として、「ロゴを見た人とのコミュニケーション」というものがあります。ロゴに親しみを感じられるという事は、“コミュニケーションを取りやすい”という事でもあります。

「大阪万博ロゴ」を“キモ可愛い”と思う人は、ロゴにキャラクター性と親しみを感じているのではないでしょうか。

 

※ロゴの役割については、記事【ロゴの価値とは?ロゴの役割と必要性から詳しく解説します!】で詳しくご紹介しています。ぜひご覧ください。

 

 

 

人々を創作へと動かした「大阪万博ロゴ」

創作活動をするイメージ

 

「大阪万博ロゴ」は好意的な意見を持っている人にとっても、かなりの衝撃を与えたデザインである事は間違いありません。

 

ロゴが発表された直後から、SNSでは「○○で大阪万博ロゴを作ってみました」といった“作品”が次々と発表されました。

インパクトが強すぎるデザインによって創作意欲が刺激されて作品を作り、SNSでその作品を見た他の人もまた創作意欲が刺激され…と、「作ってみました」が伝染していったのです。

 

自らの手でロゴをモチーフに作品を作る事で、ロゴに対してより一層親しみを持った人は多いのではないでしょうか。また、作品を見た人も、作品を通じて別の角度からロゴを見る事で、ロゴの違った魅力に気づいたのではないでしょうか。

 

ロゴのデザイナー的には全く予想していなかった展開だと思いますが、「コンセプト」に記述されている“…キャラクターとしてコミュニケーションする。自由に。有機的に。発展的に。いのちの輝きを表現していく。”が早くも実現されたのです。

 

「賛否両論が起こったロゴ」と言うと、“ロゴデザインを気に入らない人もたくさんいる”といった印象があるので、何だか“失敗したロゴ”のように感じますよね。

しかし、一気にロゴが人々に知れ渡り、思わぬ盛り上がりを見せ、非難も含めてかなりの話題を呼んだので、「大阪万博ロゴ」は結果的に“大成功したロゴ”ではないでしょうか。

 

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